106回看護師国家試験 午後問題106~120
次の文を読み午後問題106~108の問いに答えよ。
Aさん(28歳、女性)は、両親と3人で暮らしている。24歳のときに統合失調症を発症し治療を開始している。Aさんは大学卒業後に一度就職したが、発症後に退職し、現在も無職である。2週前から元気がなく、自室に引きこもって独り言を言っているのが目立つようになったため、両親同伴で外来を受診した。両親からは、1年前から便秘が続き、Aさんが薬の副作用(有害事象)を気にするようになったという話があった。
午後問題106 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。
1.「薬は飲まないといけません」
2.「薬には副作用があるものですよ」
3.「便秘は副作用ではありませんよ」
4.「便秘の対処方法を一緒に考えましょう」
午後問題107 診察では幻聴の悪化が認められたため、薬物治療の見直しが行われた。その後、定期的に両親同伴で外来通院を続けた。3か月後、幻聴は改善傾向を示し、規則正しい生活ができるようになった。外来の診察で、悪化した原因を改めて振り返ったところ、Aさんは「半年前から家族に分からないように薬をトイレに捨てていた」と話した。診察後、Aさんからそれを聞いた両親が、医師や看護師の目の前でAさんを大きな声で叱ると、Aさんの表情は険しくなった。
Aさんの両親に勧めるものとして適切なのはどれか。
1.心理教育
2.内観療法
3.自律訓練法
4.精神分析療法
午後問題108 さらに3か月後、家事の手伝いができるようになり、家庭内で落ち着いた日常生活が送れるようになった。Aさんは「自分のことは自分でできるようになって、将来はまた働きたい」と話すようになり、社会復帰に向けて社会資源の利用を検討することになった。
この時点でAさんに紹介する社会資源で適切なのはどれか。
1.就労移行支援
2.地域活動支援センター
3.居宅介護〈ホームヘルプ〉
4.短期入所〈ショートステイ〉
5.共同生活援助〈グループホーム〉
次の文を読み午後問題109~111の問いに答えよ。
Aちゃん(6歳、女児)は、重症の新生児仮死で出生した。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しているため、今回の入院で経鼻経管栄養法を導入し、退院後は週1回の訪問看護を利用することになった。現在は四肢と体幹の著しい運動障害があり、姿勢保持が困難で、移動および移乗は全介助である。声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない。
午後問題109 訪問看護師が行う母親への経管栄養法の指導で適切なのはどれか。
1.注入する前に排便させる。
2.注入中は側臥位を保つようにする。
3.カテーテルは毎日場所を変えて固定する。
4.家族と同じ食事を流動食にして注入する。
午後問題110 訪問看護師は、Aちゃんの誤嚥性肺炎を予防するケアの方法を母親に指導することにした。
母親が行うAちゃんへのケアとして適切なのはどれか。
1.腹式呼吸を促す。
2.咳嗽の訓練を行う。
3.胸郭可動域の訓練を行う。
4.含嗽液を用いてうがいをさせる。
午後問題111 母親は「Aは来年の4月には小学校に入学する年齢だけど、入学に向けてどうすればよいのか分からない」と訪問看護師に相談した。
訪問看護師が行う援助として適切なのはどれか。
1.自宅に教員を派遣できる小学校に連絡する。
2.Aちゃんが入学できる特別支援学校を紹介する。
3.父親に仕事を調整してAちゃんの送迎をするよう勧める。
4.教育委員会に小学校入学に関する相談をするよう勧める。
次の文を読み午後問題112~114の問いに答えよ。
Aさん(78歳、男性)は、尿路感染症による敗血症で入院し、5日が経過した。中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与されている。
午後問題112 朝9時、日勤の看護師が訪室したとき、シリンジポンプの閉塞と輸液ポンプの気泡混入の、2つのアラームが作動した。ノルアドレナリンの入ったシリンジは残量があり、乳酸加リンゲル液のボトルが空になっていた。各ポンプおよび各輸液ラインの状況を図に示す。
看護師がアラームを停止した後に行うこととして最も優先度が高いのはどれか。
1.乳酸加リンゲル液を準備する。
2.ノルアドレナリンを準備する。
3.輸液ポンプ内のラインの気泡を除く。
4.輸液ラインの閉塞や屈曲がないか確認する。
午後問題113 その直後、看護師はノルアドレナリンの投与量を医師の指示書で確認した。指示書には、午前6時に2ml/時間から1ml/時間へ投与量の減量の指示が記載されていたが、午前9時の投与量は2ml/時間のままであったことに気が付いた。
このときのAさんに対し看護師がアセスメントする項目で優先度が高いのはどれか。
1.血 圧
2.尿 量
3.血糖値
4.呼吸数
午後問題114 Aさんには有害事象はみられなかったが、医師の指示量の2倍のノルアドレナリンが3時間投与されていた。これは、医師がノルアドレナリンの減量を指示書に記載し、夜勤の担当看護師にそれを伝えたが、担当看護師が実際に減量することを忘れたことが原因だった。病棟では、リスクマネジメントとしてこの出来事の再発防止策を考えることとなった。
再発防止策で適切なのはどれか。
1.薬剤に関する研修会を企画する。
2.医療機器の操作方法を再教育する。
3.インシデントを起こした看護師は反省文を書くこととする。
4.医師の指示内容の変更時は、複数の看護師で情報共有をする。
次の文を読み午後問題115、116の問いに答えよ。
Aさん(23歳、男性)は、マラソンの途中で嘔吐し、意識混濁状態となり救急車で搬送された。来院時、体温39.5℃で、熱中症と診断された。気管挿管と人工呼吸器管理が実施された。膀胱留置カテーテルを挿入後に輸液療法を開始して、ICUに入室した。表面冷却と血管内冷却によって体温は37℃台に下降した。
既往歴 :特記すべきことはない。
身体所見:ICU入室時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-20。体温37.8℃、呼吸数28/分、脈拍110/分、血圧94/74mmHg。暗赤色尿を1時間で20ml認めた。
検査所見:Hb16.8g/dl、Ht48.6%、Na130mEq/L、K6.5mEq/L、Cl 1
00mEq/L、クレアチンキナーゼ〈CK〉48,000IU/L、尿素窒素60mg/dl、クレアチニン2.4mg/dl、AST〈GOT〉70IU/L、ALT〈GPT〉88IU/L。尿一般検査でミオグロビン陽性。胸部エックス線写真および頭部CTで異常所見なし。心電図でSTの変化はなく、洞性頻脈を認めた。
午後問題115 このときのAさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。
1.貧血である。
2.筋肉が傷害されている。
3.致死性不整脈が出現しやすい。
4.心原性ショックを起こしている。
5.利尿薬の使用が必要な状態である。
午後問題116 Aさんは腎不全が悪化し、持続的血液透析を1週間実施した。入院後20日が経過し、Aさんは尿量100ml/時間以上、クレアチニン1.4mg/dlとなった。気管チューブと膀胱留置カテーテルは抜去され、状態は落ち着いている。ADLは拡大し、3日後に退院することとなった。
Aさんへの退院指導で適切なのはどれか。
1.水分を制限する。
2.蛋白質を制限する。
3.積極的に運動する。
4.生野菜を積極的に摂取する。
次の文を読み午後問題117、118の問いに答えよ。
Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞と診断された。
午後問題117 このときの検査所見として適切なのはどれか。
1.心電図のST上昇
2.左肺呼吸音の減弱
3.クレアチンキナーゼ〈CK〉の下降
4.胸部エックス線写真での心陰影の縮小
午後問題118 緊急心臓カテーテル検査で左冠動脈起始部に90%の閉塞を認め、緊急冠動脈バイパス術が行われた。術後5日、集中治療室から一般病棟に転棟した。Aさんは「手術も無事終わって命が助かった。リハビリテーションが大切と聞いたので、頑張って廊下を歩きますよ」と看護師に話した。術後のADL拡大は順調に進み、Aさんは病棟内での200mの歩行が許可されている。胸部症状の出現や心電図の変化は認めない。
Aさんへの心臓リハビリテーションについて適切なのはどれか。
1.息苦しさが出現したら中止する。
2.気分の良いときに階段昇降を勧める。
3.衣服の着脱は家族に介助してもらう。
4.レジスタンストレーニングを中心に行う。
次の文を読み午後問題119、120の問いに答えよ。
Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ、全身性エリテマトーデス〈SLE〉と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/µl、血小板17.5万/µl、Hb12.5g/dl、クレアチニン2.5mg/dl、抗核抗体は陽性であった。
午後問題119 入院時のアセスメントで正しいのはどれか。
1.貧 血
2.出血傾向
3.易感染状態
4.腎機能低下
午後問題120 Aさんはプレドニゾロン60mg/日のステロイド治療が開始となった。
Aさんへの説明で適切なのはどれか。
1.「食事の制限はありません」
2.「倦怠感が強いときは薬の中止を検討します」
3.「薬の影響で気分が大きく変動するかもしれません」
4.「職場復帰に備えて天気の良い日は散歩しましょう」
5.「治療で病状が改善すると抗核抗体が陰性になります」